うつ病増加の影に製薬会社のマーケティング戦略も
「あなたは“うつ”ではありません」産業医の警告14
今日のうつ病をめぐる諸問題は、製薬会社や精神科医を悪者だと決めつけられるほど単純なものではありません。
むしろ、さまざまな「善意」が絡み合って物事が全体的におかしな方向に進んでいるからこそ、問題の根が深いと言えるのです。
実は当事者であるはずの精神科医でさえ、製薬会社のマーケティング戦略によって日本のうつ病のストライクゾーンが広げられていったという経緯を知っている人はそれほど多くありません。
よくメインストリームの精神科医(日本の精神医療の現状に疑問を感じていない精神科医)の書くうつ病関連の書籍では「うつ病の患者が2000年頃から急激に増えたのは、うつ病の認知度が上がり、受診する人が増えたからです」といった解説がされています。
しかし、その認知度を上げた「主体」がSSRIを販売する製薬会社であることについては、まず触れられていません。せいぜい「うつは心の風邪というフレーズが世に広まり……」や「うつ病を啓発するテレビCMの影響で……」といった申し訳程度の解説が加わるくらいです。
今日のうつ病の大半は「本当のうつ病」(内因性うつ病)ではなく、製薬会社のマーケティング戦略の影響でうつ病だと認識されるようになった「人生の悩みによる落ち込み」です。
その正体を知っていれば、テレビや雑誌、うつ病関連の書籍等でよく見かける「DSMもどきのうつ病チェックリスト」に何項目あてはまろうが、それほど心配する必要はないことがわかります。
大切な人を失ったり、仕事で大きな失敗をしたりすれば、1ヶ月以上つらい気分や悲しみが続くことなど当たり前にありえます。
また、食欲が無くなったり、うまく眠れなくなったりすることも当然ありえることでしょう。
「落ち込んでも仕方がないような理由」があるなら、そうした項目にいくつチェックが入ったところで、うつ病ではありません。
それは、単なる「人生の悩みによる落ち込み」です。
(取り上げる事例は、個人を特定されないよう、実際の話を一部変更しています。もちろん、話を大げさにするなどの脚色は一切していません。また、事例に登場する人名はすべて仮名です。本記事は「あなたは“うつ”ではありません」を再構成しています)。
<次回は SSRI発売後もうつ患者が増え続ける不思議 について紹介します>
- 1
- 2